宮本武蔵に出てくる、芍薬の話が好きでねい。

「剣聖」柳生石舟斎のもとへ、京で最も有名な剣豪である吉岡伝七郎が腕試しに来た際、面倒だからと芍薬を切って渡したところ、バカにすんなと怒って帰って芍薬も捨てちゃったので、石舟斎がアイツはまだまだだなあと見切りを付けていたら、後日その芍薬を偶然手にした武蔵が、これを斬ったのは一体誰なんだ?と訪ねてきたという。
道が極まった同志ともなると、何て事ない野草の切り口を見るだけでも凄味が伝わるらしい。
それは音楽も同じで、コレの疑似体験ぐらいなら若くて未熟でも出来る。
ずいぶん昔の話だけど、コンポーザーとして大好きな某氏がソロアルバムを出したんで早速買って、友達のこれまた凄腕のコンポーザー君に聴かせたら、モロ叩かれた。
確かにそのアルバム、某氏の従来の実力を発揮したとは云い難く、何て事ない曲群で構成されていたのは事実なんだが、一聴すれば才能の片鱗ぐらいは十分聴き取れる内容だった。
オレはお互いを同志と認めているだけに、片鱗を感じて欲しかったなあとちょっと寂しく思ってね。

とまあ、言い訳はこのぐらいにしまして、「8bit Music Power」がいよいよ発売になりましてん。



何が言い訳なのかっつーと、今回のオレ曲、ほぼ全般ドミソの3音しか使ってなくてですね。
(キーがFなんで正しくはファラドなんだけど、便宜上ドミソと云っておきます。)
高校の音楽の授業で、C F G7 Cっていう初歩的なコード進行に沿って、分散和音のみで4小節のメロディーを考えるという、なんちゃって作曲をやらされた事があった。
みんなは作曲の勝手なんて分かんないし、ただ適当に音符を並べてたみたいだけど、オレは自分なりに琴線に触れげな音符の配置を考えつつ提出したおかげで、先生から特別に褒められた。
褒められたっつっても所詮なんちゃって作曲の域なんで、別に偉くも何ともないんだが、今回の曲はあえて悪い云い方をすると、そんなレベルかも知れん。
ただ、オレもいい加減ベテランなんでね。
達観な御仁だったら、単純な曲の中に片鱗を見出だしてくれるだろう、という石舟斎ゴッコをやってもいいレベルにオレもそろそろ到達してないかしらん、なんて方向にも興味が行く訳で。
なので、個人的にはなかなか興味深い曲に仕上がったなあと。MMLの作り込みも頑張ったし。

コンセプトが「ファミコン実機によるチップチューンアルバム」なんで、ゲーム音楽とは構造の違うチップテクノにしよう、さらにファミコンという旧式音源らしくレトロ臭を少々醸せたら面白いかなーなどと考えた結果、前述のドミソで行こうっつーセンで落ち着いた。
ってのは、1980年前後のゲームサウンドって専門職がまだ確立されてなくて、プログラマーとかが音を作ってた時代なんで、オリジナル曲なんてせいぜいドミソ程度だったじゃないっすか。
サウンド面で一歩先んじていたナムコでさえ、ギャラクシアンのジングルは基本分散和音だし。
だから、この音源でドミソに専念すれば、その頃のイキフンに近くなるかなーって。
で、やってみたんだけど、例えば技巧的な作曲ってのは難しいっちゃあ難しいんだけど、オレ今いい仕事してるなあー、っていう安心感の中で作業を進められるメリットがある。
ところが、こーゆー単純な曲って作業中に不安感しか無えと来たもんで、過去に味わったのとは違う種類の難しさと対峙する事になったんだから、やっぱり音楽は深くて楽しいっす。

まあ、曲説としてはこんな感じでしょーか。
他のイベントとか取材で喋った内容とも被ってないと思うし。
ファミコン本体を持っていない方も、発売元のコロンバスサークルさんで互換機を出しているんで、この際買っちゃって下さいマシマシ。
あと、リリース記念ライブもやるんで、ゼヒゼヒ来ちゃって下さいマシカラニンニク。