皆さんはこーゆー話、ちょっと不思議に思うかも知れないけど。

オレがK社に入ってまだ一年にも満たないヒヨッコだった頃。
昼休みに誰かがゲームで遊んでる音が聴こえたので見に行ったら、例のイイヅカさんと企画のナカムラさんが見た事もないRPGをやっていた。
で、オレが発した第一声が「高濱さんですか?」だった。
当時ナカムラさんのプロジェクトのサウンドを高濱さんが担当してた関係で、これを入手した経緯には高濱さんが一枚噛んでるんだろうと勝手に思ったんです。
でも、先方は要領を得ない様子で、キョットーーーーンとしてる。
だから改めてその旨を確認したら「いや、コレは今イイヅカさんが蒲田の駅前で買ってきたんだ」と云うから、オレは「でもこの曲は絶っ対に高濱さんですよ」と断言して去って行った。
ナカムラさん、オマエ如きペーペーに何が分かる?って感じで信用してなくて、後日高濱さんがK社に来た際に直撃したらしい。どっちかっつーとオレに恥をかかせるつもりだったんだと思う。
すると案の定、そんなゲームに心当たりなど無いと来た。
ただ、このRPGを作ったメーカーにはよく出入りしてて、行く度に「何曲か作っておいたからテキトーに使って下さい」と云って帰るんだそうで、自分の曲がどのゲームのどのシーンで使われているかなど、まるで把握してないんだそうだ。
そんな訳で、思わぬトコから湧いたオレの戯れ言によって、めでたく高濱さん本人が見知らぬゲームへと嫁いで行った自分の音楽とご対面する事となった。
そして、オレは当面、社内で気味悪がられるっつー憂き目に遭った。一般の人にとってはある種、エスパー的であったのかも知れん。

ただ、そーゆーのは作曲のプロからすれば珍しい話でも何でもなく、同じような例は腐る程ある。
かなーり前のチップチューンのコンペの中にDisk Panicっていう変わったアプローチの曲があって、コレは面白いなあと思って聴いてたら、曲が1ループする前に誰の作なのかが解ってしまった。
って話を制作者のhallyさんに云ったら、やっぱりアプローチの奇抜さには手応えがあったんでしょーね、アレは絶対にバレない自信があったと悔しがってた。わはは、ナメてもらっちゃあ困るよ。
去年CDでも発売されたファミコン「暴れん坊天狗」の音楽は中潟さんと大久保さんによるモノで、一聴すればこの曲はどっちの作なのかが判別できるんだけど、これはまあ初級編ってトコだ。
チェロを始めた頃、アマオケ仲間とちょっとしたクラシック系のイベントに行ったら、ピアノの上手い音大生が4曲弾いていて、全部初耳な曲だったけど、これはショパンが2曲でリストが2曲だと云い当ててみせたところ、そのアマオケ仲間はオレの事をただのどシロートとしか思っていなかったから、やっぱりそこでも気味悪がられた。
大好きなコンポーザーで、加藤千晶さんという人がいる。
知ったきっかけはピタゴラスイッチで流れてた「♪どっちがどっち、どっちがどっち、どっちがヒラメ~」って曲なんだけど、コレ自体は特筆すべき箇所もない、ごく平均的なお子様ソングだ。
でもオレ、察知したんですね。この曲を作った人は、ココではお子様向けって事でヤンワリとしかやってないけど、ホントはかなーりデキルに違いない、と。
気になって早速調べたら近々ライブをやるとの記述があったから当日いそいそと出掛けてみたら、もぉキレッキレだった。演奏云々というよりは、発想がね。
大胆な和声や転調を駆使しつつも、そーゆーテクニックを完全に消化しきれているからハイレベルな情緒的表現まで出来んの。もお一目でファンになった。
何で音楽を一聴しただけでそーゆー事が解るのかっつーと、今挙げた方々はみんな大なり小なり才能があるっていう、ただそれだけの話なんです。
そーゆー人って必ず個性が出るから、その部分を探知するのは結構たやすいんです。

ところがですね、ここからはちょっと求道的な話になるんですが。
上記の通り、個性を出せてこそ一流とも云えるんだけど、オレは敢えてそれを回避するのが我が道と思っていた。
と云うのも、コレって逃げにも繋がるんですね。なので敢えてそれを消そうとした。
これはオレの病的っつーか、変なとこMっ気があるっつーか、要はあまり褒められた性分じゃない話なんだけど、曲を一聴しただけでシオダの作であるとバレたくなかったんです。
「お!この曲シオダじゃない?」よりは「え?この曲もシオダなの?」って云わせたかったんです。
作曲に対する喜び方って人それぞれで、ズバリどの道が正しいなんて云えないんですが、オレは一芸を掘り下げる深さよりも、コイツからは何が出て来るかワカランという広さに喜びを感じるタイプなんです。
例えば過去の作で云うと、このサイトにも置いてある例で云うと人生ゲームやオリビアやカルトネーム、他にもドキ遊、ファーステスト、烈火、相撲、ストバス、必殺、果てはヤキソバンなんかのように、それぞれに全く違う顔を持たせるよう心掛けた。
欲を云えば、過去に手掛けた約70タイトル分の、70個の顔を持ちたかったってのはあるんだけど、でも前作を踏襲したシリーズものもあるし、オレの場合は特にゲームボーイのお子様ゲーがやたら多かったせいで、残念ながらシオダの曲だとバレ易い音楽もいっぱい作ってしまった。
2chとかで「シオダ節」と評されてるのを見たが、まぁコレは正直嬉しく思うので云ってもらえるのは有り難いと思う反面、それに甘んじてちゃあイカンとも思ってしまう。
そしてこの、一つの芸風に落ち着かないってのはなかなか良さが浸透しなくて損をしがちである。
同じベクトルの人でパッと思い付くのが菅野よう子さんで、個人的にはかれこれ20年ぐらい前から「この人はある意味ナンバー1だ」と思っていたが、近年になってようやくNHKに重用され始めたおかげで、世間に顔や名前が認知されるようになってきた。
あーんなスゴイ作曲家でもこのザマなんだから、やっぱり大変な割には損な芸風なんでしょーね。

あ、誤解の無いよう云っておきますが、個性を磨き抜くのもとっても立派な作業であり、超一流の証でもあるし、そーゆー人の音楽もスッゲエ好きです。
並木さんとかサイトンさんみたいな個が極まってる人の音楽を聴くと、オレ行く道間違えたかなーって揺らいじゃうもん。マジで。