初めてバンドを組んだのは中3の時で、もちろんYMOのコピーをやった。

小学生の頃に加ト茶のドラムを見て以来ずーっとドラムに興味があったんだけど、みんなで初めて貸しスタジオに入ってみたら、いきなり上手かった男がいた。
だったらドラムはこの男に任せて、オレは別パートに回った方がいい音楽ができるだろうと諦めて(でも高校ではドラムをやった)、その後はキーボードっつーか、何となくシンセをいじる人というビミョーなポジションにいたんだが、ある日姉ちゃんがベースを買ってきて、オレもチョイチョイ触ってたら段々面白くなってきて、結局高3ぐらいからベースをメインにやるようになった。
そしたら、このドラマーとのコンビが何とも面白くてねい。
オレがちょっと変わったフィルを入れると必ず、おっ!って顔をする。
で、このドラマーも触発されて粋なフィルを入れて来るから、オレもおっ!ってなる。
そのやり取りがあんまり楽しかったから毎回そーゆーギミックを仕掛けるようになって、それがそのうち「よぉ、今日の調子はどお?」「オレはこんな感じかなあ」「お、いいねえ。オレはこんな感じだよ」みたいな意味合いになってきた。
音楽で会話をする、ってヤツですよ。
オレは18歳の時からそんな体験をしているせいで、チームで何かを作り上げる時はつい周りを挑発するっつーか、その手のトラップを仕掛けようとする癖がある。

K社にいた時、コミカル系のウルトラマンのゲームを作ったんですが。
敵キャラにダダがいて、これがオカマキャラっつー設定で、例えば「待ってたわよ~」とか「あぁ~ん」というオカマボイスを発する仕様になっていたのを見て、企画のオガワっちにこのボイスどーすんだよーと問うたら「総務の鈴木さんにやってもらいましょう」と来た。
簡単に云うよなあと思いつつ本人に話を持ち掛けたら、やっぱり「オガワっちめ、勝手な事云いやがって」と悪態をついてたんだが、その割にはなーんの恥じらいも無く、ものの2分でサックリ収録を片付けちゃったんだから姐さんサスガです。
後はそのボイスのピッチを下げてやればオカマボイスの完成であり、フツーはそこで終わりなんだろうけど、さらに味付けとしてうっすらとムーディーな音楽を混ぜてやった。
コレ、ゲーム的には全く意味の無い行為です。そんなのBGMでかき消されちゃうし、しかもアーケードゲームだったからゲーセンの音がうるさくて尚更意味が無い。
じゃあやらない方がいいのかっつーと、そうでも無い。
そーゆーのって、スタッフがノるんですよ。面白い、って思わせる要素が少しでもあると、愛着が増したり、じゃあオレも一丁みたいな効果が生まれたりして、ゲーム制作に勢いがつく。
このムダな効果音も、制作チームの誰かが何の気無しにサウンドテストで聴いた時に、コイツこんなバカな事をやってやがったー、と思わせれば成功なのだ。
当時、K社にはPCMデータを扱うツールが無かったから、アルュメ社にPCMコンバートをお願いしたんだけど、ここのスタッフとは電話でのやり取りしかしてないから面識も無く、くだけた話をするような間柄ではなかったんだが、全行程が終わったところで電話をして慇懃に挨拶を行ってたら急に「ところでシオダさんのダダのボイス、サイコーでしたよ。うちのスタッフみんな大爆笑でしたよ」だって。余っ程云いたかったんかい。

ファミコンなのにセガのロゴが出てきたら笑っちゃうよなー、ぐらいの事はゲーム作ってる人ならば一度は考えた事があると思うんですよ。
そんなのもちろん商品としてはダメだけど、社内だけで笑いを取るっつー目的で披露する分には、さっき云った他のスタッフを刺激する効果としてはなかなかのモンがあります。
でも、そーゆーのはプログラマがコッソリ作る種類の遊びであって、一介のサウンド要員がやりたくても出来る訳がないんですね。かと云って、プログラマに「セガのロゴを出そうよ」って云うのも、他人を動かすプレゼンとしては全然弱い。
となると当然、ここは爆破だな、っつー事になる訳です。
で、ある日、烈火のスタッフが集まって雑談してる時に、そんな話をしたらドッカーン受けた。
一流の条件っていろいろあるけど、中でも大事なのは「遊び心」だと思う。YMOやビートルズなどから学んだ事です。
そーゆー意味では、烈火のスタッフはみんな一流でしたね。知らねえヤツが登場するエンディングもバカだし、サウンドテストもバカだし。
つーか、セガのロゴが出てきたら笑っちゃうよなー、ぐらいはみんな考えるだろうけど、そこから先に踏み込んだ人がいるなんて聞いた事ないし。
まあ、結局何が云いたいのかっつーと、あの爆破には悪意などチャンチャラ無いんですよっつー。
ただ、オレがプログラマーじゃなかったっていう、ただそれだけのせいで、捩じ曲がったプレゼンをしなくちゃならなかったっていうだけな話でありましてですね。

あ、そうそう。バカなサウンドテストと云えば、今年は当サイトを久々に期間限定でクリスマス仕様にしてみました。
BGMはそのバカなサウンドテストのための、単なる悪ふざけで作った曲だったりしてね。