佐野実さんというラーメン屋さんがいる。

TVにもよく出てる「ラーメンの鬼」と云えば、ご存知の方も多いだろう。
まあ、あんなキレキャラでエラそうなオヤジだから、さぞ敵も多い事と思う。
でもオレは、このオッサンをとっても尊敬していまして。
もう10年以上前なんだが、何かの雑誌で名物ラーメン店主を数人集めて座談会をしていて、そこにこの頃から怖いラーメン屋として知る人ぞ知る存在だった佐野さんも参加していた。
店主たちへの「なぜラーメン屋さんになったんですか?」という質問に対し、生活のためだとか、後継者がいなかったからとかいう解答が飛び交う中、佐野さんは一言「ラーメンが好きだから」とだけ云い放ち、一同がそれじゃあ質問にならないよと笑っていた。
でもコレ、考えようによっては聖者の発言かも知れん、とその時に引っかかったんです。
そもそもオレが作曲のプロになろうと思ったのは、能力的に自信があったっていう以上にですね、音楽が好きな事にかけては誰にも負けないような気がしてたからなんです。
だからなのか、佐野さんの云う「ラーメンが好き」には、この人、最高のラーメンを作る為ならどんな犠牲も厭わないっつー肚の決まった人なんじゃねえかと思わせるモンがあったんですね。
それ以降、このオッサンを気にするようになったんだが、知れば知る程スゲー人だった。
まだラーメン屋として軌道に乗ってもいない頃、ヒントを求めて山形へ行ったらおいしい国産小麦の麺に出会い、帰って製麺所にその小麦を扱ってくれと談判したら断られ、じゃあ仕方ないと店のカウンターを削って製麺室を作る改装をしたら一文無しになって、奥さんに逃げられたという。
現在はラーメンも売れ、TVにも頻繁に出演するようになり、今頃さぞかしラクして稼いでるのかと思ったら、理想の小麦を見つけたと云って原産地の北海道まで行き、自らコンバインに乗って麦を刈って工場まで見学したら、ラーメンに対するモチベが高まったなんて今でも云っているんだから、とんでもねえラーメンバカですよ。オレごとき音楽好きなんか到底足下にも及ばない。
オレも、こんな素敵なバカになりたい。

コチラ、Pro Cableさんと云うお店のサイト。
何だか云いたい放題だけど眉唾だぞ、っつー印象を与えるっていう部分では佐野さんと同系だ。
でも真面目に読んでみると、とっても研究熱心な上に柔軟な考え方ができるご主人である。
そこに書いてある事は、常識にとらわれていてはなかなか気づかないような内容が多く、なかなか理にかなった事を云っている。
そんな中「世界一優れたCDプレイヤーは、iPodだ」との記述を見つけた。
数百万円もする最高級CDプレイヤーよりも、壱萬円そこそこのiPodのヘッドフォン端子からアンプに出力した音の方が遥かにスバラシイ、と云うのだ。
実はコレ、オレも以前から気になっていたんです。iPodなんてのはフツー、AACとかMP3程度の簡易音源を、しかも大して音の良くないヘッドフォンからしか再生しないモンだが、そんな悪条件な音のクセに、何つーか、音のカタマリ感が妙に気持ちイイなーと思っていて。
さらに読んで行くと、デジタルケーブルってのはかなり伝送エラーが多いから、例えばCDを焼く場合なんかもコピーが終わった後にベリファイだとかエラー訂正などの作業が付き物であるのに、エラー訂正をする事もなく再生してしまうCDプレイヤーなんてのは、不完全なデジタルデータを垂れ流すだけのシロモノであり、音がいいハズが無いんだと云う。
iPodとCDの聴き比べだったらすぐに試せんぢゃんと思い、CDを無圧縮のAIFFに落としてiPodに入れて、スピーカーから再生して聴いてみたら、マヂ驚きっすわ。iPodの音ってスゲー濃密なの。
そーかー、オレが以前から気になっていたカタマリ感って、データの密度だったのかー。
で、CDを聴いてみたらまるで歯抜けみたいな音だったから、ここまで如実に差が出てしまったら何だか面白くなってしまい、家中の再生装置をとことん試してやった。
iMacのミニステレオ端子はiPodとほぼ互角。充分iPodの代わりとして使えるレベルだ。対してUSBのオーディオI/Oの音は相当デタラメだ。ナロー、知らずに長年愛用しちまったぢゃんかよー。
でも、そんな安物I/Oならまだいい。プロの間でも音がイイと評判の某社FireWireのI/Oを恐る恐る聴き比べてみたら、iMacに完敗と来たから泣いた。せっかく大枚叩いて買ったのに。
単純に2ミックスを出力するだけなら、高いI/Oを使うよりもMac本体から出す音の方がイイんだからショックだよなー。
そしてさらに、MacやiPodよりもAirMac Expressから出力した音の方がさらにスゴイらしい。
まだ試してないけど、恐れ入った。思わぬところでアップルコンピューターの底力を思い知る。

で、先週の200Vの話の続きなんですが、この店からダウントランスを買いまして。
コレは200Vの電圧を100Vに落とすというシロモノだ。
それじゃあ200Vを引いた意味がまるで無いぢゃんか、と思う御仁もいるかと思いますが、実はコレが音を格段に良くするマジックなのだ。
専門的な説明は控えるけど、一般的な100Vってのは相当ノイズが乗る仕組みになっていて、音響ってそーゆー部分にデリケートだから、そんな汚い電源だとすぐに音に影響しちゃう。
ところが、200Vってのは逆にノイズをキャンセルする仕組みだから、そのクリーンな状態でダウントランスをカマしてやれば、クリーンな100Vに化けるってな具合だ。
しかも電源ケーブルが3芯だからアースが確実に取れる。基本的に音響機器ってのは、コンセントの挿し方を左右逆にするだけで音像がブレちゃう(実は機器側にも極性が設定されているため)から、しっかりアースを取ってやれば音が締まるのは想像できたけど、ここまでしっかりと根の張った音に変わられると嬉しいやら心地よいショックやらで、顔のニヤけるのを抑えるのが困難なぐらいだ。
その嬉しい勢いのまま、ケーブル類を全て整備し直してみた。BELDENのラインケーブルを入れたら今まで真ん中付近でゴニョゴニョ鳴ってたパートが左右に広がったし、各パートの分離も良くなってモニターしやすくなった。電源ケーブルもBELDENのシールド入りにしたら、以前より楽器が生々しく鳴るようになった上、今まで無駄に出てたローが削られてまとまりのある音になった。
でも、今回一番驚いたのは、たった20cmのFireWireケーブルを導入した事だ。
CDプレイヤーの件でデジタルデータのモロさを知ってしまったからには、デジタルの通り道を徹底的にショートカットしてやらないとイカンと思い、例の高価なI/Oに繋いでみたんですよ。
すると、完敗を喫したハズのiMac本体の音に肉迫するところまで一気に追い付いちまった。
スゲー、まさかこんなに効くとわ。つーか逆に、デジタルって怖いね。気を付けねばならん。
でもここまで追い付けたんだから、FireWireのI/Oもどうにか活躍できそうだ。ヨカッタヨカッタ。

ところで、オレがK社に入ったのが89年12月18日。今日で作曲のプロになって丸20年なんだな。